【温泉の基礎知識】
<鳴子温泉の泉質>
このページでは鳴子温泉で湯巡りをする上で、知っておくとより一層役立つ温泉の基礎知識を紹介していこうと思います。
まず鳴子温泉の魅力を語る上で欠かせないのが泉質の豊富さです。温泉の泉質は、現在10種類に分類されていますが、鳴子温泉にはその中の7種類の温泉があります。また以前は更に細かく分かれていて、それを元にした21種類の泉質の中でも、鳴子温泉は13種類の温泉があります。
もっと言えば、鳴子温泉に約60ある温泉施設それぞれが独自の源泉を持っていて、同じお湯は1つも無いくらいに多種多彩個性豊かな温泉が鳴子温泉にはあります。
こちらが21種類の泉質と簡単な説明の一覧表で、左に♨マークが付いている温泉が、鳴子温泉にある温泉です。
新泉質名 | 旧泉質名 | 特徴 | 主な効能 | |
---|---|---|---|---|
♨ | 単純温泉 | 単純温泉 | 下の温泉になるための基準値を満たしていないだけで多種多様なお湯がある
つまり下の泉質の弱めのものを単純温泉としてひとまとめにしている 癖が無く肌に優しい初心者、お年寄り、子供向け |
神経痛、関節痛、腰痛、疲労回復など |
♨ | 塩化物泉 | 食塩泉 | 湯冷めしにくい温まりの湯、しょっぱい、保湿効果、海の近くに多い | 保温・保湿効果、冷え性、切り傷 |
炭酸水素塩泉 | 重炭酸土類泉 | 清涼感がある、鎮静効果、ツルツル美肌 | 切り傷、火傷、慢性皮膚病、痛風、 じんましん、アレルギー性疾患 |
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♨ | 重曹泉 | 清涼感がある、ツルツル美肌 | ||
♨ | 硫酸塩泉 | 硫酸塩泉 | 肌の蘇生効果、傷に良い、火傷に効く | 外傷、火傷 |
♨ | 石膏泉 | カルシウムが主成分、傷の湯、ハリと弾力のある肌 | 外傷、火傷、痔疾、慢性皮膚病 | |
♨ | 芒硝泉 | ナトリウムが主成分、保温効果、しっとり肌 | 高血圧症、動脈硬化症、外傷 | |
正苦味泉 | マグネシウムが主成分、血圧を下げる、鎮静作用 | 高血圧症、動脈硬化症、脳卒中 | ||
♨ | 明礬泉 | アルミニウムが主成分、鉄分も含まれている、目の湯 | 慢性皮膚病、慢性消化器病、結膜炎 | |
二酸化炭素泉 | 単純炭酸泉 | 心臓に優しい、血液の循環がよくなる、炭酸の泡、泉温は低い | 高血圧症、心臓病、糖尿病、肝臓病 | |
♨ | 含鉄泉 | 鉄泉 | 赤褐色、婦人病に効果あり、よく温まる | 貧血、月経障害、更年期障害、リウマチ |
♨ | 緑礬泉 | 鉄泉+硫酸塩泉、ねっとり感 | 外傷、火傷 | |
炭酸鉄泉 | 鉄泉+炭酸水素塩泉 | 慢性皮膚病、痛風、アレルギー性疾患 | ||
♨ | 含銅泉 | 黄褐色、殺菌効果、脳の活性化 | 月経障害、高血圧症、貧血 | |
♨ | 硫黄泉 | 硫黄泉 | にごり湯、卵の腐敗臭、解毒作用、シミ予防効果、刺激が強い | 生活習慣病、痰、喘息、心臓病 |
♨ | 硫化水素泉 | 殺菌効果、湯ただれ(皮膚炎のこと)しやすい | 湿疹、疥癬、慢性皮膚病、血糖値下げる | |
♨ | 酸性泉 | 酸性泉 | 殺菌効果、酸っぱい、刺激が強く湯あたりしやすい、肌が弱い人は注意 | 水虫、アトピー性皮膚炎、慢性消化器病 |
含アルミニウム泉 | 目の湯、酸性泉と同じ | 慢性皮膚病、慢性胃炎、結膜炎 | ||
放射能泉 | 放射能泉 | 万病に効く、免疫力アップ、鎮静作用、刺激が強く湯あたりしやすい | 痛風、間接リウマチ、強直性脊椎炎 | |
含よう素泉 | 体質改善の湯、苦味、薬臭、殺菌効果、非火山性の所にある | 高コレステロール血症 |
<鳴子温泉に無い温泉、レアな温泉>
鳴子温泉には無い温泉の内、含よう素泉は2014年に新たに定義されたばかりの温泉で非火山性の温泉に多いため(最近出来た東京丸の内の温泉も含よう素泉です)必然的に鳴子温泉にはありません。
放射能線は全国に約40ヶ所にしかない非常にレアな泉質で、そもそも基準となるラドン成分が微量でも含まれている温泉すら数えるほどしかありません。ちなみに鳴子温泉では、中山平温泉の『東蛇の湯』が微量なラドン成分を含んでいます。
二酸化炭素泉も全国で50数ヶ所しかないレアな温泉ですが、 基準値には達していないものの『滝の湯』、『農民の家』、『東多賀の湯』などは成分が多めで、二酸化炭素泉に近いお湯を十分に楽しむことが出来ます。
鉄泉と酸性泉もあまり数の多くないレアな温泉ですが、鳴子温泉のシンボルでもある共同浴場『滝の湯』は、この両方を兼ね備えた温泉となっております。あまり広くはなくいつも地元の人で賑わっていますが、鳴子温泉を訪れた際には絶対に入って欲しい日本有数の名湯です。
少し変わったレアな温泉として飲泉があります。 温泉は入浴するだけでなく飲むことによって体内から効果を発揮させますが、きちんと検査して国から飲用許可が出ている温泉施設は決して多くありません。鳴子温泉だと湯治宿でもある中山平温泉の『あすか旅館』が飲用可能な温泉となっております。
<鳴子温泉の美肌の湯>
鳴子温泉と言えば、美肌の湯が多いことでも知られています。三大美人泉質と言われているのが、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、硫黄泉で、それぞれの効果はこうなります。
●炭酸水素塩泉:肌の角質を取る
●硫酸塩泉:肌の蘇生効果
●硫黄泉:シミ予防効果
また上の表の泉質とは別でpH値(水素イオン濃度)が低いと酸性、高いとアルカリ性の温泉になります。pH値が高ければ高いほど肌の角質を取るはたらきが強くなるのですが、7.5~8.5pHの弱アルカリ性程度が適度な刺激で美肌効果が高いと言われ、四大美人泉質と言われることもあります。
鳴子温泉の美肌の湯として全国的に有名なのが、鳴子温泉の『ゆさや旅館』に中山平温泉の多くで見られる通称うなぎ湯です。うなぎ湯は石鹸のようなぬるぬるした触感のお湯で、肌の角質を取ることによって美肌効果をもたらします。
うなぎ湯はどの泉質に該当するのだろうと気になる所ですが、どの泉質というよりかは様々な温泉成分のバランスによってぬるぬるした触感のお湯になります。詳しく説明すると難しくなるので簡潔に記しますと、温泉成分の内のナトリウム系アルカリ成分が多く、カルシウムイオン、マグネシウムイオンが少ないとぬるぬるした触感になるようです。
他には炭酸イオンが20mg/kg以上あるとヌルヌルした感じが分かるようになり、30mg/kgを超えるとかなりぬるぬるしたお湯になります。またそれ以外にもメタケイ酸、メタホウ酸が多く含まれている、pH値が高いということなども関係しているようです。
ナトリウムイオンが主成分の温泉は、塩化物泉、重曹泉、芒硝泉と鳴子温泉に多い温泉で、一方カルシウムイオン、マグネシウムイオンが多い炭酸水素塩泉、重炭酸土類温泉、正苦味泉は鳴子温泉にありません。
炭酸イオンですと、うなぎ湯の『ゆさや旅館』は90mg/kg、中山平温泉の『しんとろの湯』は105.3mg/kgを始め100前後の数値の温泉が多く、残念ながら数年前に廃業してしまいましたが『丸進別館』は166mg/kgという圧倒的な含有量でした。
また鳴子温泉は全体的にメタケイ酸、メタホウ酸が多く含まれていますし、『ゆさや旅館』や中山平温泉はpH値が特に高い数値となっており、こうした要素が合わさって鳴子温泉にはぬるぬるした触感のお湯が多いのだと思われます。
いずれの温泉に入浴するにせよ美肌の湯に入浴した後は乾燥肌に注意してください。塩化物泉は保湿効果があるので、美肌の湯の後で仕上げに入ると効果的です。
<鳴子温泉の七色の湯>
このように鳴子温泉は個性豊かでレアな温泉の宝庫となっておりますが、それがすぐに分かるのがこのサイトのタイトルを「七色の湯」と名付けたように、色取り取りの温泉があることです。下に鳴子温泉の主なにごり湯をまとめましたが、御覧の通り七色どころではなく本当に沢山の色の温泉があります。
にごり湯になる理由ですが、まず前提として温泉の色は基本的に全て透明なお湯です。その透明なお湯が空気に触れる、つまり酸化することによって化学反応を起こして色が付き、お湯に含まれている成分が豊富だと(成分にもよりますが)にごり湯になりやすいです。
色の違いについてですが、大体硫黄泉だと乳白色のお湯か緑系の色のお湯になります。また鉄分が含まれていると空気に触れて酸化して錆びることによって茶色のお湯になります。赤や黄色のお湯になるのも鉄分が関係しています。通称すがわらブルーと呼ばれる『旅館すがわら』のコバルトブルーのお湯は、メタケイ酸が多いことが関係しています。高友旅館や馬場温泉などの黒いお湯に関しては、温泉分析書に記載されている成分とはまた別の有機物が影響している場合が多いです。そのため残念ながらあの独特の機械油の臭いの理由はまだまだ謎となっております。
鳴子温泉に限らずにごり湯を訪れた際に1つ気をつけて欲しいこととして、必ずしも期待通りの温泉の色になっているとは限らないということです。
前に書いた通り温泉の色は基本透明で、これに様々な条件が加わる事によって色が付くので、気候や時間、浴槽にお湯を投入したタイミングなど色々な条件によって温泉の色は変わります。ですので訪れた温泉が下のような色になってなかったからといって、宿にクレームを入れるようなことはくれぐれもお控えください。それに色が付いていない透明なお湯という事は、逆に言えばそれだけ新鮮なお湯という事でもあるので、そう前向きに捉えてみるのはいかがでしょうか。
ではにごり湯の良さは何かといいますと、単純に一目見ただけで普通のお湯とは違う視覚効果で気持ちよく感じるというのもあると思いますが、ちゃんと具体的な効果もあります。
にごり湯になる為には温泉水が空気に触れて化学反応することによって起きると書きましたが、実はその際に柔らかく優しい温泉に変質して、熱いお湯に入った時のピリピリした痛みが和らぐのです。
有名な草津温泉の湯もみもお湯をかき混ぜて単純に温度を下げるだけではなく、お湯を柔らかくする事によって高温でも入りやすくする為でもあります。家のお風呂ですと42度を越えると熱くて入りにくいという人が多いと思いますが、温泉だと多少高めでも気持ちよく入れるのはそういう事でもあります。ですので温泉は、透明で新鮮なお湯も鮮やかなにごり湯もどちらが良いという訳でもないのです。
それを踏まえた上で色々な温泉に入って、自分の肌に合う温泉を見つけたり、同じ温泉に何度も訪れてみて、その都度変わるお湯の色の違いを楽しめるようになることが出来れば、あなたも温泉マニアの仲間入りです。
♨東多賀の湯・乳白色
♨湯元吉祥・水色
♨旅館すがわら・コバルトブルー
♨まるみや旅館(廃業)・薄茶色
♨川渡温泉共同浴場・緑茶色
♨西多賀旅館・うぐいす色
♨ゆさや旅館・エメラルドグリーン
♨大沼旅館・黄色
♨馬場温泉・暗緑色
♨高友旅館・黒
♨旅館ゆさ・コーヒー色
♨いさぜん旅館・赤